ひとりで楽しく食事をする
ひとりでテレビを観て大笑いをする
母の話。去年最愛の夫を亡くした母を私は心配していた。あんなに夫中心で生きていた母は、夫のいないこの先の人生をどうやっていくのか?と興味深く見ていた。
「夜な夜なお骨をかじってそうだな・・・母ならやりそうだわ」と思うくらい、母は父を愛していた。
母は元気だ。片麻痺があるし、車の運転もしないので、山奥の山荘ような家で下界に降りず、独りで暮らしている。
滅入ることもなく、週一のヘルパーさんと三人の娘の時々の訪問だけで元気にやっている。(寒い地域なので冬の間は東京にいるが)
寂しいなんてこともないし、孤独なんて感じないらしい。
強がりかな?とも思うが、そうでもないらしい。
唯一の不満は「お父さんが夢に出てこないのよ!」ということ。お怒りです。「夢にくらい出てきてくれてもいいんじゃないの!!?」とご立腹です(笑)
そして、元気だった頃の父の姿を思い出せないことも不満。
こちらはお怒りというよりも「不思議」らしい。金婚式までやるくらい一緒にいたのに、本当にあまり思い出せないらしい。
お父さんのこと忘れちゃったのかしら?私?とちょっとお悩みだった。
母はインストールしてしまった
そんな話を家族ぐるみで仲の良いご婦人にしたらこんなことを言われたらしい。
「あなたの中に先生(父)はしっかり存在しているからよ」
と。
母はそれで納得した。「なぜあの方(80歳くらい)は独身なのにそういうこと(パートナーシップ)が分かるのかしら?でもその通りだなと思うのよ」と。
ああ、なるほどと思った。母は父が亡くなったショックで色々忘れてしまったわけではない。母の中に父がインストールされているので、その肉体が滅んでもあまり関係がなかったということなのだろう。
もしかしたら母は父が生きていた時より元気かもしれない。父が好きすぎてその父中心の生活が、人生が回っていた母。その肉体がなくなったことにより、物質的な自由を手に入れた。それはそれで自由なんだろう。
父が生きていた時には見られなかった姿がチラホラ見え、姉と「母が面白い」と言う話が起きている。(贔屓の力士が勝つと「いやっほーー」と大喜びして手をたたいたりする。そんな姿は今まで見たことがない)
母はこの先一生孤独ではない。母の中に父が存在しているから。それでも夢の中くらいは父の元気な姿を見たいらしいけど。
まったくエキセントリックでメルヘンな母だ。
そんな母になりたかった
母は父が本当に好きで、父が82歳で他界する間際まで、お見舞いに来る女性に嫉妬していた。
すげーなーと思っていた。
あんな風なパートナーシップに憧れた。
いや違う、あんな風に思える母に憧れた。自分には今のところできない。
程遠い・・・
おかしいな・・・心理学的には両親のパートナーシップが子どものパートナーシップに影響するはずなんだが。
まぁそうは問屋が卸さないのが人間心理だな。
でも、ひとつひとつ丁寧に因数分解していくと、納得できる着地点にたどり着くもんだよね。
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長姉が絶賛反抗期だった時、あまりにも母に腹が立って腹が立って腹が立って、父にこう訊いたそうだ。
「なんであんな人と結婚したの!?(`_´)」と。
すると父はこう答えたそう。
「世界中が敵に回っても、この人だけはオレの味方でいてくれると思ったからだ」
そういうことだな。
そして母は幸せだ。今も昔もこれからも。