ストーリー

私だったら結婚しない【ストーリー】

もじゃもじゃ頭のカウンセラー 山本春野です。どうぞお見知りおきを。人間距離(じんかんきょり)を程よく守って、沈めてしまった本当のあなたを見つけるお手伝いをしています。

ストーリーを綴ってみます。

フィクションです。物語です。

1回完結ではなく、to be continue でやってみようと思います!
なにごともとりあえずチャレンジしてみることにしました。

感想などお待ちしております。

なんでこんな場所に、こんなに馬鹿でかい観覧車を作ろうと思ったんだろう。

曇天の空の下、もうすでに30分以上も待ちぼうけをくらっているりかは、そんなことをぼんやり考えていた。

なんでヤツは時間通りに来ないんだろう? ドキドキしながら待てるのは10分だけだ。その後は「なぜ来ない?」という不安。「もしかして事故に巻き込まれたとか?」という恐怖。そんな思いに囚われると連絡するのも怖くなる。

勇気を振り絞って電話をする。

数コールの後、電話に出た真島浩二は焦った様子もなかった。

事故じゃなかったという安心をした途端、怒りがわいた。

「どうしたの?もう観覧車のところにいるんだけど?場所わからない?」

ちょっといらだった声を出してしまった。でも責めるような言葉を言わなかっただけましだろう。もう33歳だ。若い子のように拗ねたってかわいくもない。

「ああ、今ねスーパーに行って鶏肉買ってきたところ」

何を言っているのか一瞬わからなかった。待ち合わせ時間を30分以上過ぎているのに、まだ自宅…?っていうか鶏肉ってなに?

今日は初デートだった。付き合ってもいないのに、浩二から「結婚しましょうか」と言われたのは2週間くらい前のことだ。

同僚だけれども、お互いをよく知っているというほどでもない。だから、まずは『結婚を前提にお付き合い』ということに落ち着いた。

それにしても事情が事情だったかもしれないが、突飛なことを言いたす男だ。それに乗っかるの女もどうかと思う。

「じゃぁ、初デートはピクニックにしよう。お互いがお互いの得意のお弁当を作ってくるってことで」と提案したのは浩二の方だった。

りかは料理が得意で、お弁当も毎日作って会社に持って行っている。だからと言って気負って豪華弁当を作るのも30過ぎて恥ずかしいと、それなりのお弁当を用意した。それでも適当ではない。それなりに気を使ったものだ。

「なんで鶏肉なの?」
「お弁当に唐揚げを入れようと思って」

質問を間違えた。

「いや、なんで今この時間に鶏肉を買いにいくの?待ち合わせ時間過ぎてんだけど?」

「ああ、そうだよね。急ぐから。あと30分くらい?」

この男はバカなのか? りかはうっかり罵倒しそうになった。

あんたの家からここまで1時間はかかるよな?
今から生の鶏肉を唐揚げにするのに一体何分かかると思うのか?
あんたはドラえもんか!!

と。

*******

同僚時代は仲が良いと思っていた。りかの方から半年くらいアプローチをしていた。 浩二の性格がとても穏やかで、苛立ったところを見たこともなかった。そんなところに好感を持っていた。

(結婚するなら怒らない人がいい)りかの結婚相手に求めるものだった。それに浩二はぴったり当てはまっているように思えた。

りかは職場の中では年長者ということもあり、あまり感情を表に出すということはない。いつでも『頼れるりかさん』だった。何を訊かれても丁寧に答えて、頼まれることは断らないをモット―にしてきた。

なのに、突然のクビきりにあった。正確にはクビきりではなく異動命令だったが。異動先はとてもじゃないけれど納得できるところではなかった。会社側の「辞めてもらって結構ですよ」という声が聞こえたような気がした。

やりたくもない仕事をやるくらいなら辞めてやる!!と啖呵を切ってりかは退職を決めた。

心残りは浩二のことだった。なんとかデートの約束にこぎつけたはいいものの、『直前でドタキャン』がもう5回は続いていた。

ああでもない、こうでもないの試行錯誤を繰り返したが、メールをしてもすぐ返って来る時と、1週間放置の時とあり、振り回されっぱなしだった。

ちょっとめんどくさくなってきたな。もういいかな…と思っていたところにこの退職騒動が起きた。

30才中盤にさしかかるこのタイミングでの無職。実家暮らしで親からの諸々のプレッシャー。同僚からの「あの歳でかわいそう」と思われることの恐怖。

そんな色々が重なって、勢い余って仕事帰りに浩二を食事に誘った。

あれだけドタキャンが続いていたのにも関わらず、浩二はあっさり了承した。

深夜のファミレスでりかは、会社に対する愚痴を浩二にぶちまけた。

浩二は取り立ててどうということもなく、ただ相槌を打ち続けた。

その姿にりかはだんだん腹が立ってきた。

この人は一緒に怒ってくれないのか?
同情もしてくれないのか?
わかるよ~の一言もないのか?
それよりも、私がいなくなることを何とも思わないのか!!

その脳内がダダ漏れになってしまったらしい。気がつけばそのまま言葉にしていた。

「真島さんは私が職場からいなくなって寂しくはないんですか?もう会えなくなるかもしれないんですよ?!」と。

浩二はストローの袋をいじりながら、それまでの態度と変わることなく、顔色も変えずにこう答えた。

「寂しくはないですよ。結婚すればずっと一緒にいられますからね。結婚しましょうか」

りかは、一瞬言葉を失ったがすぐに答えた。

「結婚します」

今抱えている問題すべてが『結婚』という現象ですべてが解決するように思えた。

でも、「この人と結婚したい!」「この人を愛している!」という熱情ような感情が欠落しているような気がした。

大したイケメンではないけれど、心ときめく人ではないけれど、これくらいがちょうどいいのではないかと、少し冷めた頭で感じていた。

結婚っていうものは愛し合う二人が結ぶ契約というのは幻想で、本当は社会の立場や秩序を守るだめだけのものなんじゃないかと。

自分の都合のいいように、感情のおもむくままに相手に「言わせてしまった」のではないかといくばくかの罪悪感を抱えながら、いわゆる「結婚を前提としたお付き合い」が始まった。

*******

浩二がお弁当を作っている間、りかは動いているのかいないのかよくわからない観覧車を眺めながら、時折浩二が送ってくる、お弁当制作の実況中継のような1連の連絡を見ていた。

今、下味付けてる
小麦粉まぶしたよ
油の温度が上がった

こんなことを知らせる余裕があるのであれば、さっさと作りなさいよ。
っていうか、遅刻するくらいなら、手作りは省略して総菜でもなんでも弁当箱につめてきなさいよ。普通はそうするでしょ!
遅刻するのはおかしいでしょ。
初デートなんだよ?

そんな思いが頭の中をグルグルグルグル回り続ける。

りかの頭の中とは裏腹に、観覧車は動いているのかどうかわからない速度でのんびりと回り続けていた。

(つづく)

人生の一大イベントの一つ『結婚』。もっと悩んで考えて検討して慎重に決めるもんじゃないの?りかさん…って思っちゃったりして。

初デートで不思議くん爆発の浩二さん。

りかさんと浩二さんはどうするんでしょう?どうしたいんでしょう?

続きはこちら↓

私だったら結婚しない 第2話
私だったら結婚しない 第3話
私だったら結婚しない 第4話
私だったら結婚しない 第5話

 

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