よく言いますよね。パートナーは鏡。
遅刻とドタキャンが定番の浩二さんからの返事がパタリとなくなってしまったりかさん。
ひとりで結婚準備を進めちゃっていますね。大丈夫なんでしょうか?
前回までのストーリー↓
私だったら結婚しない 第1話
私だったら結婚しない 第2話
私だったら結婚しない 第3話
浩二さんとりかさんの結婚までのストーリー4。
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打って打って、休んで休んで、売って休んで休んで打って、休んで休んで…
「っていうカスタネットみたいな感じになって、今はなんかずっと長休止に入ったみたいです。2時間の遅刻はあたりまえ。約束のドタキャンは3回に1回くらいなんです。よく風邪ひくんですよね。で、念のためやめておくっていうんです~おかしいと思いませんか!!?」
と本田りかは、初対面の年長のご婦人たちに話をしていた。
なんでこんな身の上話がはじまってしまったのだろう。おばさんという人種は誘導尋問がなぜこんなスムーズなのだろう?
結婚しようと言われ早10か月が過ぎていた。りかの一応の婚約者の浩二は結婚する気があるのかないのかはっきりさせないまま、連絡を返さなくなった。
そんな話をりかはなぜか初対面のおばさまたちに熱心にしていた。
結婚式はあこがれのレストラン挙式で、手作り感を出したい!!と前々からの夢があった。そんな中でウェルカムボードをワイヤーアートで作りたくなったりかは、タイミングよく近所の公民館のカルチャースクールのような、サークルのような謎の組織を見つけた。あまり深く考えず、体験でやってきた。
自己紹介で「レストラン挙式でウェルカムボードの枠を自分で作るのがあこがれです」なんて正直にいったものだから、おばさまたちの質問を矢のように受けてしまっている。
りかもなぜか包み隠さず話をしてしまっている。友だちの由香里や麻子に話をしてもよかったが、否定的なことしか言われない気がした。他に相談相手がいなかったということもあったのかもしれない。誰かに話を聞いてもらいたかっただけかもしれない。
50歳後半~70歳代と思われるおばさまたちに「そんな男やめなさい」と説教されるかと思いきや、意外な会話が始まって驚いた。
「ああ、あるわね~。結局怖いのよ。責任感が強いんじゃないの?オレで養えるのか…?みたいに不安に思っちゃってんのよ」
「それはあるわよね~。自信のなさを怒鳴り散らしてごまかす人もいるけど、そうやって逃げちゃう人もいるわよね。そんなのいいのよ。がっしり逃げ場所を塞げば。がっはっは」
「え…そうなんですかね…。私のこと別に好きでもないのかななんて思っちゃって」
「好きとか嫌いとか別にどうでもいいのよ~」
どうでもはよくないだろう。
「昔は好きだか嫌いだかもわからない状態で結婚して上手くいく夫婦なんてごまんとしたわけでしょ。お見合い結婚でね。もちろん耐えることが結婚だみたいな昭和の時代もあったわけだけど」
「そうよ~うちのお父さんなんか話全然聞かないわよ~。あ~とかうん…とかだけよ」
「うちも似たようなもんよ~」
ワイヤーを器用にくねくねを曲げながらおばさまたちは思い思いの結婚観を語り始める。
確かに、お互いを知らなくて結婚することがあった時代は好きとか嫌いとか、性格とか価値観とか全然確認せずに結婚している。
それでも上手くいく時があれば、破綻することもある。
だから結婚なんぞはもしかしたら好き嫌いの問題なのではないのかもしれない。
「で、本田さんはその人と結婚する気はまだあるの?」
唐突に訊かれて驚いた。
「結婚はしますよ。だって結婚するって言っちゃったし」
そう言ってから心臓がどきどきした。「言っちゃった」から結婚するのか。
思い通りに曲がらないワイヤーにイライラし始めていた。いや、イライラするのはワイヤーのせいじゃないかもしれない。思い通りにいかないワイヤー。こっちに曲げたらいいと思ったらその先が続かない。こうだと思ったのにそうじゃなかった。そんなイライラ感。
綺麗に仕上がっているワイヤーアートを見て、簡単にできるような気がした。ちょっと練習すればできるだろうし、思い通りの作品ができるって思った。
心のどこかで「そんなはずない」という声を聞きながら。
「本田さんはさ、その人と結婚することにどんな不安がある?」
「え…どんな…ですか?」
「そう、結婚するって人生の一大イベントなわけじゃない?話聞いていると手放しでうれしい!楽しい!!ってわけじゃなさそうだから」
「う~ん…経済的にやっていかれるのか?とか、子どもとかどうしよう?とか、すごい価値観の違いがわかったらどうしようとか、実はマザコンだったらどうしようとか…まぁ色々…」
「そりゃそうだよね。その不安ってさ、本田さんしか感じていないと思う?」
「ええ~あっちは何にも考えていないと思いますよ。何にも言わないし」
「ふ~ん…本田さんはそういう不安をお相手に伝えているんだ」
「言いませんよ~。言ったって何かしてくれるわけじゃないし」
「じゃ、お互いがお互いの不安とか、どうしたいとかそういう話はしていないわけね」
「う~ん…。なんで色々やってくれないのか不思議だからそういうことは訊いたりします」
「なんでやってくれないのよ!!とか?」
「やって欲しいことがあったらそう言いますね」
「相手にとったら、なんだかわからないけど責められているって思っているかもね」
「始まった~壺姉さん節~」
おばさまたちがニヤニヤしている。
「壺姉さん??」
「そのうち「壺買わない?」って言われるんじゃないかっていつも言ってんのよ」
「まだ、壺は出ないよ。まだ壺印の水くらいだよ」
と壺姉さんはゲラゲラと笑った。
「私の話を聞いて、壺印の水飲めば素晴らしい結婚ができて、幸せな結婚生活が送れるよ。はい、1本1万円~」
そんな水があったら買うかも…とりかは真剣に考えた。
「どうやったら連絡きますかね?」
「さぁ?どうなんだろうね?相手にとっての普通の連絡頻度なんてわからないよね」
「いや、でも連絡しないと決められないこともあるし。何考えているかわかんないし。」
「不安に思っていることをわかってもらいたいのかな?」
「まあ、そうかも」
「本田さんが相手のことがわからないように、相手も本田さんことわかってないよ。それを相手にお伝えしたいのであれば、まずは自分が何を考えて何を感じているかを知ることからじゃな~い?それがわかんないと相手にも伝えられないからね。はい、壺印の水1本1万円。あっ因みに相手にこうなって欲しいじゃないからね。それはただのコントロールだから。相手を変えることはまずできないって思ってね。ハイ、水2本で18,000円割引価格~」
今、感じていること。
結婚について真剣に考え欲しい
結婚向けて一緒に準備がしたい
もうちょっと色々動いてほしい
私ばっかりにやらせないでほしい
もうちょっと話をしてほしい
相手への要求ばかりが出てくる。
なにを感じているんだろう?
怒り…
それを浩二にわかってもらいたいだけなのか。怒っていることを知ってもらえればそれでいいのだろうか。
誰にわかってもらいたいんだろう。
怒りを伝えたらきっと嫌われてしまう。
だったらこのまま連絡が来なくなって、結婚ができなくもいいのかもしれない。
私のせいじゃない。あっちが連絡をよこさなかったんだから。
私のせいじゃない。
「だいたいあなたが感じていることは、相手も感じているもんだよ」
壺姉さんがそう言った。
絡まってもうどうしようもなくなったワイヤーアートを見て大きなため息をついた。
自分の思い通りに人生が進むんだったら壺買うかもしれない。
そもそも「思い通り」ってなんだろう。
壺を買ったらそれもわかるんだろうか?
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既読スルーが続いていたけれど、なんとなく連絡してみた。
あっこういうことは返事するのね…とりかは少し笑ってしまった。
そして、たまにこういういいことを言うから腹が立つんだよ!!と今度は怒りが沸いた。
感情は忙しい。
(つづく)
連絡をあまりよこさなくなった浩二さん。めんどくさくなっちゃったんでしょうかね?
それとも結婚したくなくなっちゃったのでしょうか。りかさんの不安が募るのも無理はありません。
また問い詰めちゃうと、ますます連絡が来なくなるからと我慢をしているのでしょうか…。なかなか難しいものです。
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